Phoebus No.725
こんにちは、こんばんは。
多くの登山家が愛したと言われる、中欧オーストリアのPhoebus No.725です。
前の記事で、この武骨バーナー購入の顛末を書きましたが、まぁ一目惚れです。お店に入って一番最初に目に入ったのが赤い缶に入ったコレで、心にグッと刺さりました。一応、他のものも物色したのですが、もう心の中では決まっていました。確か1万円ぐらいだったと思いますが、当時の学生にとっては気合いの入る額です。
髭の店主には「ちょっと扱いずらいよ」みたいなことを言われました。常連のおじさんもこれを使ってるらしく、「いや、これ使ったら他のに行けない」と推してました。自分もこれ以外は無いと決めていたので、更に「ぐいっ」と店主に差し出したと思います。
このバーナー少し変わっていて、燃料タンクを加圧する「ポンピング機構」がありません。2枚目の写真のように風防を外すと、余熱皿と言われる窪んだ部分が見えます。ここにアルコール燃料もしくは固形燃料を注ぎ(置き)、点火して余熱(タンクに加圧)する仕組みです。取扱説明書には火力調節出来ると書いてありますが、猛火か鎮火の2選択です。もしかしたら私の製品だけの特性なのかも知れません。
弱火は鍋を上に遠ざける、という火力調節が現実的です笑。ポンピング作業が無い分、楽ではあります。
非常に単純な仕組みですが、構成部品が少なくて済む=壊れるリスクが減ります(さすが軍用品ですね、考えられています)。
頃よく加圧されたらコックを回し点火。ゴゴゴ〜っと恐ろしくも頼もしい轟音と共に青い炎を発します。燃料は原則ホワイトガソリンですが、(使ったことないけど)無鉛ガソリンも使用可って説明書に書いてあった。
初めて買ったバーナーで比較対象も無く、扱いづらさは分からなかったのですが、髭店主は火力調節のことを言っていたのだと思います。確かにそこは笑。その当時、ガスで「ぱっ」って点き、とろ火から強火まで何でもござれのMADE IN JAPAN製品もありましたが、自分はこの点火前の儀式が何とも玄人っぽくて好きでした。
だけど残念な点が1点だけあります。
ペラんペラんの反射板。燃焼バーナー部と燃料タンク間の熱を遮断する大役を担った部品です。大役を担ってる割にペラんペラんなのがまずイケてません。
(タンクとの間にスペースを設けるため)板に足を付ける必要がありますが、端っこに切り目を入れ、折り曲げただけの安っぽい作りが裏目に出て、爪足がタンクの表面をギコギコこすり、塗装剥がれの要因になっています。
なんかこの部分だけ、後付け感が出てて「らしくない」んですよね。
ここでちょっと考えてみました。
もしかしたらですが、初期ロット出荷直前となった燃焼系の試験で不具合が発覚。軍への納品が遅れる事になるので社内は騒然とします。この製品は軍御用達で名を挙げ、一般市場へ展開する社運と命運を掛けた一大事業です。
「ならば、なおさら再設計にて根本対策を行うべき」と強く唱える職人気質のあご髭職人らの現場側と、早く手柄を挙げたい最近継いだばかりの若社長を取り囲む経営陣とで、連夜の激論が行われました。
ところが、若社長の取り巻き経営陣らは、安易安価での解決案を出した銀ぶちメガネの新任設計者(若社長の弟)の意見を取り入れ、慌ててペランなアルミ板を切り出して出荷。「足なんてピピっと切って折って爪にしりゃいいの」と。その後、根本対策を切願したあご髭職人らは無念と自主退職。現在に至る。
と勘繰りたくなる。長い笑
他はキッチリ頑固一徹、壊せるもんならやってみろ的な作りなのに、ここだけポヨ〜ン、ペラ〜んって薄っぺらなアルミ板なんだもん。爪なんて2、3度折り返したら確実にポキン行くから怖くて触れないし笑笑、いやこりゃないだろって話。
ペラんペラん反射板の話はユーザー間で盛り上がりたかったなぁ、No.725使ってる人とついぞ出会わなかったので、残念無念。
兄貴分のNo.625には反射板ないんですよね〜、なんで付けたんかなぁこの赤ちゃんの前掛けスタイル笑。やっぱり安易安価出荷説が濃厚だよね。
さっき、ネットオークションに売りに出てた、割と使い込まれているの見たけど、反射板は昆布かワカメかってぐらいに、ぐにゃぐにゃにひん曲がってた笑、まぁそうなるよな。
バイクツーリングは登山同様に移動が目的で、行動食って感じでしたので袋ラーメンを作ったり、レトルトのカレーやご飯を温めたり。そんな使い方でしたね。だからあんまり傷んでません。
程なく社会人となり、仕事も忙しくバイクも降り、家庭を持ってしまい、このバーナーの存在すら忘れていました。最近ふとした事で思い出し、納屋から掘り起こしてメンテナンスしたばかりです。
往年の武骨バーナー。これほんとに登山に持って行ったのかな。結構重いしガソリンも携行するんじゃ大変だったろうなぁ...。
ではまた。